いでまい食堂

しあわせごはんとおやつ、ときどきおはなし

ひとりぼっちのライオン

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きょうもサバンナはおだやかでした

とろけそうなはちみつ色の太陽がわらっていました

太陽にみつめられると、だれもがしあわせな気持ちになりました

ライオンもそれにくるまってぬくぬくとするのがすきでした

 

だけど、きょうはそんな太陽さえもうっとうしく感じられました

いつもならは気持ちがいいはずなのに、きょうは嫌な気分でした

 

そう、このごろのライオンはなんだか元気がありません

それがなぜなのか、ライオンにもわかりませんでした

 

なんだか力がでなくてやる気がでなくて、まいにちただ草むらにねそべっているだけ

 

そこへ、森からうさぎがやってきました

「こんにちは、とてもいいてんきだね。きもちがいいね」

 

うさぎはライオンのまわりをはねまわります

ライオンはうんざりしました

 

うさぎはよくライオンのところへあそびにくるのでした

ぴょんぴょんはねてたのしそうにするのでした

すばしっこくにげては草むらから、「わっ!」とライオンをおどろかせるのがすきでした

ライオンはそれにいつもおどろいてしまうので、よけいにうさぎをわらわせました

 

でもきょうはうさぎがとんでも、踊っても、歌ったって、ライオンは目を閉じたままで、とうとうそっぽをむいてしましました

「どうしたの?元気がないね、おなかでもいたいのかな?」

ライオンはだまっています

うさぎはライオンのおなかをやさしくなでてあげました

それでもライオンはそっぽをむいてだまったまま

はやくうさぎにどこかへいってほしいとおもいました

しばらくうさぎはそんなライオンのそばにいましたが、やがて森へとかえっていきました

 

うさぎがいなくなると、あたりは急に静かになって

ライオンは世界でたったひとりきりになってしまったような気がしました

自分はほんとうにいまここにいるのかさえ不安になってきました

 

たとえばあした、ぼくがどこかへきえてしまったとしたらだれか悲しんでくれるだろうか

きっとだれも気がつきはしないだろう...

そしてぼくのことなど忘れてしまうのかな、あのうさぎだって

ぼくはなぜこの世界に生まれてきたのかな、などとおもいました

 

むかしライオンのおかあさんがいいました

「このせかいにうまれてきたのは、だれかをしあわせにするためなのよ。ママもぼうやがいてくれてとってもしあわせだもの。」

 

だけど、そのおかあさんももういません

ライオンはほんとうにひとりぼっちなんだとおもいました

いったいだれをしあわせにして、だれがしあわせにしてくれるのかわかりませんでした

だれもぼくのことなんか必要としてくれていない

 

ライオンはとても悲しくなりました

しょぼくれたひとみから大つぶの涙があふれでました

あとからあとから流れでました

それから大きな声でわんわんなきました

 

太陽は西の地平線へゆらゆらとしずみかけていて、東の空にはいちばん星がきらきらと瞬いていました

ライオンのことなどまるでおかまいなしに

 

その日からライオンは考えました

まいにちまいにち考えました

うさぎはときどきあそびにきましたが、ライオンがそっけないのでだんだんと姿をみせなくなってしまいました

 

ライオンはほんとうにひとりぼっちでした

泣いてもさけんでもだれにも聞こえませんでした

どこにも届きませんでした

ライオンはおもいっきりさけびました

「だれかぼくをみつけて!おねがい!ぼくはここにいるよ!!」

 

でもその声は乾いたサバンナではひびくこともありませんでした

いくらライオンがさけんだって、だれにもその声は届きませんでした

とてもひろいひろい世界なのに

 

ぼくはここにいるよ...

 

ライオンはとうとう暗い穴ぐらに閉じこもってしましました

太陽の光はあたまをぐるぐるさせました

視界もかすんで、からだもふらふらでした

もういっそこのまましんでしまって、風にでもなれたらいいのに

でもほんとうにしんでしまうのかもしれないと考えると少し悲しい気持ちになりました

 

今さら、うさぎを邪険にしたことを後悔しました

あんなにライオンのことを心配してくれていたのに...

ライオンはうさぎにとても会いたくなりました

もう会えないことをすごく後悔しました

 

そしてライオンはひとり静かに目を閉じました

にどと太陽の光の届かないところへいくために

 

 

どれくらいの時間がすぎたのでしょう

 

ほんとうにぼくはしんでしまったのかな

ぼんやりと目にうつる景色...だけどみなれたいつもの場所がちゃんとここにありました

そして、その中にはあのうさぎの姿もちゃんとあったのです

心配そうにライオンの顔をのぞきこんでいるいつものうさぎの姿が

 

「なぜきみはここにいるんだい?」

そう言ったライオンの声はかすれていて、ちゃんと聞こえたのか不安でした

「なぜってきみが大すきだから」

 

そう言ってうさぎはなにかをさしだしました

ああ...!

 

それははちみつのキャンディでした

とろとろにとろけそうな太陽みたいにきらきらの、とってもきれいなキャンディでした

いくら体の大きなライオンでも食べきれないほどたくさんのキャンディでした

 

「ぼくの、ために...?」

うさぎはわらいました、ライオンもたぶんわらいました

 

そして、ふたりはくちいっぱいにキャンディをほおばりました

それはとっても甘くてとってもやさしくて、しあわせの味がしました

 

ライオンは泣きました。わんわん泣きました

あまりにわんわん泣いたのでそばにいるうさぎがびしょぬれになってしまうほどでした

うさぎもつられて泣きました。ふたりでわんわん泣きました

太陽にむかっておもいきり泣きました

 

はちみつみたいな太陽の光がふたりをやさしく包んで

すべてがまるで宝石みたいにきらきらと輝いていました

 

ライオンは涙でぐしゃぐしゃの顔でこんどこそちゃんとわらって言いました

 

「ありがとう」